わたしが最愛の薔薇になるまで
 私は、恋も愛も知らないまま、虫のいない温室の薔薇のように飼い殺された。

 結婚から半年と経たずに、夫は死んだ。未亡人である私には再婚話が山と積まれたが、彼らが垣之内家の財産目当てだということは若い身空でも分かっていた。

 そんなとき、垣之内の遠い親戚に、両親を亡くして引き取り手に困っている双子がいるという話を聞いた。
 私は思った。子どもを持てば、この遣る瀬なさも紛れるだろうか。

 当時、十歳だった双子を引き取って養母になると、ぱたりと縁談は止んだ。
 私は、相変わらず恋を知らないままだけれど、他人を慈しむ心は双子が教えてくれた。

 蕾と咲には、言い尽くせないほど感謝している。
 私が再婚して、双子がより良い伴侶に恵まれるならば、それもいいかもしれない。


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