さまよう

「そろそろ帰るよ」

 後ろにいた女性は男の子に声をかけた。

「わかった!じゃあね、おにいちゃんたち」

 母親のもとに走っていき、手を繋いで歩いていく様を見て翔は思う。


 亮一もこんな気持ちだったのだろうか……。





 その日の夜高熱を出した二人は翌日緊急入院をすることとなった。

 昼過ぎに微熱まで下がった二人が病室を一度出ようと思って動き出した時、体に小さな振動を感じて突き飛ばされた。



 床に転がった二人が目にしたのは、少し離れたところに倒れこんでいる翔と翼だった。


< 68 / 73 >

この作品をシェア

pagetop