私の婚約者には好きな人がいる
「惟月さんが私に触れないのは私のこと、子どもっぽいからだって、思ってました」

惟月さんは笑った。
お父様と約束していたなんて知らなかった。
それに大切にしてくれていることも。

「そんなわけないだろう?」

「だって」

「黙って」

惟月さんはぞくりとするほどの色香を放ち、目を細め、顔を近づけると唇を重ねた。
唇を塞がれて、激しい口づけを何度も交わした。
まるで、今までの分を取り戻すような貪り尽くすような口づけに息をする暇もなく、惟月さんの腕にしがみついた。

「はっ…あっ…」

「大丈夫か?」

「ご…めんなさ…い」

どうやって息をしたらいいか、わからない。
息を荒げる自分に顔を赤くして、惟月さんを見上げた。
よくみると瞳は茶色で見つめていると、魂を吸いとられてしまいそうなくらいに綺麗な瞳だった。
なんて不思議な色。
いつまでも、見つめていれそうな気がした。
髪を手の平でなでられると、びくっと体が震え、惟月さんの手で触れられる場所、全てがこそばゆく感じた。
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