私の婚約者には好きな人がいる
たいしたことはしていないのに一人になると、ドッと疲れが襲ってきて、お風呂に入りながら、眠りそうになってしまった。

「あ、危ない。お風呂で溺れるとか、シャレにならないわ」

お湯からでて、髪を乾かした。
住み込みの家政婦用の部屋は広く、アパートのワンルームくらいはある。
ただし、陽当たりの悪い裏口近くだけど。
バスとトイレは別だし、文句はないし、むしろ、待遇がいいくらい。
気がつくと、一日の報告書を書きながら、眠気からぐらぐらと頭を揺らしていた。

「もう寝よう……。初日だもん。疲れて当たり前だよね」

ふあ、と欠伸をして、ベッドに横になると、自分でも思っていた以上に疲れていたらしく夢も見ないで眠ってしまった。
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