おもいでにかわるまで
高速と一般道路を使い、宿泊ホテルのある街まで向かう途中で寄り道をして、水族館へ行った。ちょうど昼食のタイミングで、先に館内のレストランで食事をしてから回り始めた。

「長谷川さん。やっぱり混んでるね。手を繋いでたら他の人の邪魔にならない?離すよ?」

「嫌。」

「そっか・・・。」

水樹だって手を離す気もないのに白々しい。

「1時からペンギンの散歩、1時半からイルカショー、2時から亀のご飯、3時からテッポウ魚のエサやりがある。」

「全部は無理だよ欲張り。ほら行くよ。」

最初の桁外れの特大水槽から順路に従い移動していく。

「熱帯魚すごくカラフルできれいだね。この青い魚知ってる。」

「ナンヨウハギ。海水魚店ではなかなか高い値段するよ。でもなんか立花さんてあのアニメのナンヨウハギっぽいよね。」

「そうなの!?そんなに忘れっぽいかな。」

「そっちっていうよりすぐ暴走する所とか。」

「あは。そうだね。認める。じゃあ長谷川さんは、お父さんの方のカクレクマノミ。いつも私と一緒なんです。」

かわいい。そもそも今日は現実ではない。夢の中か魔法の中で、明人は水樹のペースにわざと巻き込まれていたかった。そして水槽を観覧してはイベントの都合が合えば参加し、とにかく初めて二人で訪れた水族館は新鮮で楽しく、最後はカフェで休憩した。

「歩き疲れたっ。少し休憩したらもう出よ。」

「なんとか座れて良かったね。」

「うん。あー今日は人に疲れた。それよりそれうまそう。」

「あ、ごめんね気が利かなくて。お皿借りてきて半分にするね。ちょっと待って。」

「半分もいらないよ。でもこういうのってあーんってするんじゃないの?」

「あはは。しないよ。長谷川さんらしくない。」

あーんしない所もかわいい。でも、水樹はスプーンを紙ナフキンで拭いてプリンをすくい、‘はい。’と明人の口の中にスピーディに突っ込んだ。そのあーんは明人が思っていたのとはどこか違ったが、乱暴な動作と引き換えに手に入れたプリンは痛くて甘くて柔らかかった。

「昼飯も水族館だったし、旅のグルメはないね。俺食べ物興味薄いし詳しくないからごめん。」

「いいよそんなの。それに長谷川さんのそんなクールな所も好きなんだ。ていうより・・・全部が好きです。」

「えっ・・・。そ、そんな事言って恥ずかしくないの?」

としどろもどろになりながら微笑み返した。全部が好きだなんて困ってしまう。明人は今ここでもう水樹を抱き締めたい。そしてコーラを飲んで頭を冷やし、水族館を出発してからの残りの運転についてざっと予定を立てた。

「長谷川君?」

唐突に名前を確認され反射で振り向くと、二人の女が立っていた。
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