おもいでにかわるまで
旅行から数週間が過ぎた冬、明人は国語の授業は当然聞かずに来週に迫る水樹の誕生日プレゼントについて頭をひねっていた。何を、どこで、いくらで、と明人にはこれが酷く難題だ。

ぬいぐるみ、文房具、ハンカチ、靴下。それらしい候補を挙げていく。何をあげても喜びそうとはいえ初めての誕生日プレゼントに何か良い物はないかと真剣になる。そして慣れない事をした為にうっと気持ちが悪くなった。

それより12月の国語の授業は、テーマを自分で決めて新聞のように一枚の紙にまとめ、教室の前に出て発表しなければならなく、ただ明人のつまらない発表は先週に済んでいた。そして今水樹に順番が回っているのだが、明人は楽しみというよりは見ていられなくて恥ずかしい。

水樹は緊張して声が高く固く棒読みになっている。それは水樹の本読みの特徴で、水樹には悪いと思いつつ毎度笑いを堪えていた。そして、ついでにその本読みの特徴に一番初めに気が付いた、まだ付き合う前のぎこちないわざとらしい二人を思い出しては笑いを追加した。

その放課後、明人はプレゼントの偵察の為に水樹には黙ってショッピングモールに来た。ただ、目的もなくウロウロしてみるものの施設内は広すぎるし買い物は嫌いだしですぐに疲弊した。

雑貨屋、服屋、帽子屋。明人は各フロアを探索しながら、プレゼントを買うという行動はこんなにも大変なのに、さらっとこなす世の中のモテる男は凄いな、と変な部分に感心した。そしてアクセサリーショップに通り掛かると立ち止まった。

こういう物って欲しいのかな。いつも綺麗な水樹に似合いそうだと思った。

「何かお探しですか?」

「あ、いや・・・。」

「奥様へのプレゼントですか?」

「えっ!?」

奥様?どこが?何言ってんのこの人。とすぐに話し掛けてくる店員が意外性なく嫌いで明人はテンパイした。

「あ、いや、彼女に・・・。」

そして、自ら産んだ‘彼女’と言うどストレートな言葉にツモって赤面した。

「どういうタイプにするかお決まりですか?指輪やネックレス、ピアスなんかもありますよ。」

「あ、自分で見ますので。」

「何かあればお呼び下さいね。」

疲れた。水樹には悪いけれど早く買って帰りたかった。でも明人は入り口付近の商品を見て思考が止まったのだった。

ショーケースの中に疑問を抱く。同じ金属の色でも何故か値段が異なるのだ。それにあげるなら指輪?とよぎるけれどもわからない。指輪を贈る意味は、いつも一緒だよ。みたいな事なのだろうかと予想する。旅行に行ってからまだあまり月日が経っていない事もあり、明人は今、水樹に夢中だった。

明人は決めた。でも早く帰りたかった。
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