おもいでにかわるまで
水樹は目を輝かせて心の底から勇利に対して感動を抱き、それから勇利は涼し気な顔のまま戻ると全員とハイタッチをした。

その勇利の終始クールな振る舞いでは瞬介にストライクの重圧が掛かるのも無理はなく、瞬介から力強く投げられたボールはギュインと方向を変えた後にピンを7本倒して消えていった。

「何そのカーブ、超ツボなんだけどっ。」

瞬介は、はは、と苦笑いしてなんとかスペアを取ると、レーンに向かってきた水樹とすれ違いざまに目を合わせて、片手でタッチを交わした。

「水樹ちゃん頑張れー!」

「ガータだけはやめてよー!」

「勇利君、変なプレッシャーかけちゃ駄目じゃん。」

「それにしても正木さん遅いですね。」

「今日はもう無理なんじゃないかなー。この一週間ハンドより真面目にボーリングの練習してたのに、超うける、じゃなくて超気の毒だよねー。」

「残念です。」

「去年のクリスマスなんて彼女に二股されて振られてるしさあ、聖也もそろそろ良い事あるといいのにねえ。」

聖也は大先輩である為、瞬介は返答に困ったので投球前の水樹にわざと意識を移して切り替えようとしたが、それは思惑通りにいかずに今度は溜め息が出た。自分とは違い、背が高くスラリとしている水樹が羨ましくて異様に虚しかったのだ。

そしてその直後の水樹の投球に皆が釘付けになり、更には画面に表示された球速が27km/hなのを確認すれば今度は大爆笑に変わるのは必然であった。

倒れたピンは8本だったものの、各々の記憶にいた全女子の球速を遥かに上回っていて、当然先に驚きがあったのだが、なんと言ってもそれ以上にこの作為的な光景が妙でおかしかった。

「あー・・・。」

頭を抱え込んでしゃがみ込んだ後、水樹は皆の方に向かって大口を開けて笑ってみせた。だからつられて皆でもう一度大声で笑い合った。

「なんなの超うまいじゃん!うまいっていうか何あの球の速さ。俺の上から発言返してよ恥ずかしすぎやば。」

「宇野さん。本当は私得意みたいです、ボーリング。」

「そういえばソフトボール出来るんだよね。あのグイングイン投げるの、ウインドブルだっけ?超かっこいいよね。」

「ウインドミルですよ、宇野さん。」

勇利と話す水樹はとても嬉しそうで、ただ瞬介は横でそれをにこにこと聞いているのがやっとだった。

結局水樹は、その後も飛んだり跳ねたりしゃがんだり回ったり、くるくるよく動きながらボーリングをした。

瞬介に関しては夏子と話してばかりになってしまったけれど、そもそもボーリング自体が楽しくて、瞬介にとっても時が経つのはとても早く、あっという間に2ゲームが終了し結果発表を心弾ませながら待っていた。
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