おもいでにかわるまで
マークがきつくて思うように動けない。でも聖也は強気な姿勢を崩さなかった。

この大会の目的は自分が得点王になる事ではないとアピールする目的で、大袈裟にドリブルして敵を引き付けそして華麗なフェイントで抜いてからフリーの先輩にパスをした。

「ナーイッシュ!」

勘違いすんなって。俺の憧れてきた先輩達は神なんだよ。このゲームも貰うから。

シュートが決まり聖也は得意気に思った。

先制されたB校も目の色を変えて反撃に出る。さすが全国常連だけあって闘い方をよく知っている印象だ。

前半25分、得点は15-13で聖也達がぎりぎりリードしているがやや膠着(こうちゃく)状態だ。でも最後までこのモチベーションを維持出来れば勝利して勝ち点3が手に入る。

ただ、一昨日から続く過密スケジュールに体もくたばり始めていた。

足がやべー・・・。

太ももやふくらはぎがパンパンに張って固くて痛い。それでも聖也は止まるわけにはいかない。でもすぐに敵がファウルしにくる。

ファウルと言っても、ハンドボールでは相手に接触して動きを止めるのがディフェンスの一種のやり方である。

聖也はスピードをあげてまたボールを運んだ。自分がまたパスをして先輩にポストシュートを決めて貰いたい。

その為にドリブルで切り込んでいこうとした時に、ガッ、と音がして聖也は宙に浮いた。

バッターン。

え・・・?

ピーッ。

痛ってえ・・・。

相手に体を強く掴まれた後、勢いで床に落下した。そして仲間に助けられ起き上がると、審判が敵にイエローカードを提示した。

痛てーなくそっ。たったのイエローかよっ。

失ったチャンスと床に叩きつけられた痛みを思うとイエローカードでは気が収まらなく、聖也は怒りのあまり敵に頭突きでもしてやろうかと思ったが、結局15-13のまま前半が終了しハーフタイムに突入した。

「正木、いけるか。」

「お前あぶら汗超出てんぞ。」

顧問、先輩の心配に聖也は答える。

「さっき倒れた時に左肩ぶつけて・・・元々昨日軽く痛めてて・・・それで・・・痛いっす・・・。」

「昨日のファウルの時か・・・。お前、後半休ませるわ。」

顧問が指示を出す。

「無理っす。勝ちに行くんで。」

その聖也の返事に部長はキレた。キレてから感情任せにぶちまけた。

「何言ってんだよそんな汗かいてさ。お前さー、なんか勘違いしてない?なんの意地張ってんのか知らないけど、お前のちっぽけなプライドなんて試合にはなんも関係ないだろ?怪我したお前を出して負けたらどうすんだ?俺達をお前のそのつまらない美学にでも巻き込むつもりか?」

部長の怒りは正論過ぎて情けなくなり、聖也は下唇を噛んで泣きそうになるのをぐっと我慢した。
< 49 / 265 >

この作品をシェア

pagetop