おもいでにかわるまで
「大丈夫ですか・・・。」

「あー、うん、ちょっとね、しんどい、かな・・・。」

何がどうしんどいのか水樹にはわからなかった。加えて何歩譲っても、勇利を傷付けた仁美を(いたわ)ってあげる言葉も掛けてあげる気の利いた言葉も今日の水樹では生まれて来なかった。

水樹は今回の件には無関係であり、当人同士の問題なのは明白で一応は承知している。それでも水樹が返事をしてしまうのは優しさではなく勇利が関係しているから、ただそれだけだった。

「どうかしたんですか・・・。」

「今日は勇利君クラブに来た?」

「はい。ただ、体調は悪そうにしてましたけど・・・。」

「そうなんだ・・・。」

水樹はこれ以上の言葉が出てこなかったし、この重苦しい空気を吸ってまでこの場に留まる必要性はないと判断したので買い物は止めてこの場を去ろうとした。

「勇利君何か言ってなかった?」

「私は間宮さんと別れた事を聞いただけなんです。」

「はあ・・・。」

仁美は深く大きなため息を付き、そして涙目で言った。

「謝りたくて電話したりしたけどね、無視されてるんだ。」

「えっ!?」

どうしても何を言っているのかがわからなくて怒りの感情が芽生え、そして水樹は段々とその感情を抑える事が出来なくなってしまった。

「あの、今日は宇野さんとてもしんどそうで見ていられませんでした。私は何があったか殆ど知らないですけど、どうして新しい恋人がいるのに間宮さんがそんなに悲しそうにするんですか?」

水樹は少しだけ大きな声で叫ぶと、悔しくて目に涙をためた。そしてそんな不純な気持ちを同性の仁美は見逃さなかった。

「凄い必死だね。水樹ちゃんてさあ、勇利の事が好きなの?」

「えっ!?」

水樹は限界まで目に涙をためて言った。

「大好きですっ。後輩としてっ・・・。」

「ふーん。よく勇利の周りチョロチョロしてたもんねぇ。」

「そんなの今関係無いですよ。こんなに早く心変わりするなんて、宇野さんがかわいそう過ぎます。それなのに間宮さんまで辛そうにしてたら私、何をどう理解すればいいのかわからないですっ。」

水樹は言葉を続けた。
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