お嬢様は恋したい!
「香子様、クビですか。」

「前田さんは、今日でクビよ。明日からは私が優秀な前田景子さんを雇うから。」

前田さんは、キョトンとしている。

「川田さんからの派遣じゃなく、私との直接契約ね。期間は京都にいる間、いままでと同等の待遇で条件は川田さんに私の様子を教えてと言われても言わないこと。」

「は、はい…」

金銭的なことでは、お父様を頼るしかないけどちゃんと一叶と生きていかなきゃ。

秀介さんには、絶対に迷惑かけない。

いくらお父様の会社で秘書をしている高給取りとは言え、私のためにお金を使わせるなんてしちゃダメなんだから。

年末年始は、さすがにお休みとあって、お父様に秀介さんは着いて来なかった。

それを寂しいと思ってはいけないのに思ってしまうほどには、秀介さんの存在は大きくなっていたらしい。

でも手を離した私がそんな事を思うなんて、図々しすぎるよね。

「いっちゃん。じいじだよー。」

お父様がこんなに孫バカになるなんて思わなかったけど、一叶を可愛がってくれるから本当に良かった。

「ところで一叶の父親とは、連絡は取っていないの?」

「一叶が生まれる前に偶然、一回だけ会ったけど川田さんと一緒にいたから川田さんと結婚して子どもがいるんだと思われて、連絡先も交換しなかったから。」

「ったく。川田は余計な仕事しかしないわね。」

秀介さんの優しさを知った今では、以前のようにお母様に同意する気になれない。

あの人は、自分と自分のテリトリーに入れた人間にだけ優しいんだろう。

そう考えるとお父様には、結構言いたい放題だけど、かなり仲がいいからテリトリー内?

どっちなんだろう。

でも私に対していたようにお父様に優しい秀介さんを想像できないなぁ。

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