人生の相棒~運命の人は突然に現れる~
「彼女には一切の追及をしない代わりに、全国の劇場への出入り禁止と俺や亜月の前に現れないことを約束させた。

これで婚姻届の問題は解決だよ」

孝太は笑った後で、両手で包み込むようにして私の手を握った。

「孝太?」

「俺、亜月に何もできなかった…」

「えっ?」

どう言う意味なのだろうか?

「ただでさえ初めての妊娠で不安になっているのに、こんなことが起こったせいで余計に不安にさせて…本当だったら俺が亜月のそばにいて、“大丈夫だよ”と励ましたり、抱きしめる立場なはずなのに…」

そう言っている孝太の目は潤んでいた。

絹子さんから話を聞いたのかも知れない。

「頑張るって言ったはずなのに…なのに、肝心な時にそばにいて、亜月を守ることができなかったのが悔しくて…」

「孝太…!」

握っているその手にもう片方の手を伸ばして重ねた。
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