手錠、そしてキスの雨を2
「仕事、終わったんだろ?早く降りて来い。あと三分内に降りて来なかったらどうなるか、わかってるだろ」

警察が一般市民を脅迫してどうするんだ、と心の中でツッコミつつも、遅れると私にとって恐ろしいことしか待っていないので素早くタイムカードを押し、かばんを手に会社を出る。

会社の自動ドアの先には、そこそこ高いスポーツカーがある。合コンした次の日からずっとそうだ。スポーツカーのドアが開き、「お疲れ」と着崩したスーツ姿の伏黒さんが手を振ってくる。イケメンは何をしてても様になるから嫌だ。

「お迎えありがとうございます。警察官って暇なんですか?」

残業ができないことに苛立ってしまい、ついつい嫌味を言ってしまう。すると、伏黒さんはニヤニヤと笑って私の両頬を少し乱暴に掴んだ。

「よく言うな。俺に誘拐されてる身だろ?」

そう、この人の言う通り私は誘拐されている。誘拐犯は警察官の伏黒さん。睡眠薬を盛られて、朝目が覚めたら手錠で拘束され、無理やりキスをされるという最悪の出来事が起きていた。
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