手錠、そしてキスの雨を2
イライラしながら仕事をしていると、時計の針が夕方の五時を告げる。仕事が残っていなければ帰ってもいい時間だ。何人もの社員が体を伸ばし、「やっと仕事が終わった」と急ぎ足でタイムカードを押していく。

みんな、家に早く帰って好きなことをしたいんだろう。でも私は逆。家に帰りたくない。ずっとここで仕事をしていたい。何なら、このオフィスが私の家になってもいいと思っている。

「三恋都!私、先にタイムカード押しちゃうね。今日これからご飯食べに行くんだ」

浮かれた様子で未来がタイムカードを押しに行く。未来はあの合コンでイケメンな彼氏を望み通りゲットできたみたい。しょっちゅう惚気話を聞かしてくる。

「私の父親があんなんじゃなかったら、もっと違う人生だったのかな……」

普通に男性を好きになれて、結婚したいとか考えていたのかな。そんなことを考えていると、ブブッとスマホが音を立てる。LINEだ。送ってきたのは伏黒さん。
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