仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
台湾の希望の大学に入学した私は、四年間一心不乱に勉強をした。
おぼろげだった自分の夢がはっきりしてきたことと、半ば強引に国外脱出した責任のようなものを感じていた。
両親からも風雅からも逃げてきた。それならここで結果を出さなければ。

四年生の時に、教授の紹介で台湾の有名企業から家具デザインの仕事をもらった。最初は教授の手伝いだったけれど、いくつかこなすうちに私個人への依頼になった。
高齢の教授は孫娘のように私を可愛がってくれ、私に多くのチャンスを回してくれた。それをひとつひとつ課題に向き合うようにこなしていくと、私のスキルも少しずつ上がっていくようだった。自己の成長がうれしい。

卒業後も台湾に残り、フリーランスのデザイナーとしてやっていきたい。
教授に相談すると、フリーランスは最初のうちは厳しいぞ、と知り合いの内装会社を紹介してくれた。少なくとも卒業後の足掛かりができ、私は悩んだ。
このまま台湾にいてもいいだろうか。ここで仕事を得て、生きていく。今ならそれができる。
両親はきっと怒るだろう。大学だけだと許してくれたのだ。
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