仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
相談も兼ねて帰国したのが春。
両親に会うより先に会ったのが風雅だった。彼にも断っておかなければならないのは、この時点でまだ私たちが婚約関係だったからだ。

風雅は年に一度か二度、私が帰国するタイミングで必ず食事に誘う。お互い高校時代みたいに好き勝手しゃべりあって、風雅がからかい私が怒って終わりという食事会を恒例としていた。

『いいんじゃない?』

風雅はさらりと言った。あまりにあっさりしているので拍子抜けしたくらいだ。

『いいの? 私、台湾で仕事するんだよ、この先もずっと』
『だって、希帆がやりたいことがそれなんでしょ。俺、止めらんなくない?』

だけど私はこの男の婚約者のままだ。天下の榮西グループの御曹司の婚約者が、国内にいなくてもいいのだろうか。

『風雅、いい機会だから、私たち婚約解消する?』

思い切って尋ねた。なにしろ、風雅と私は婚約者といってもろくに会ってもいない。風雅はあきらかに私に愛情はなく、私も同じくだ。
しかし風雅はふるふると首を振った。

『んー、やだ』
『やだって、風雅さぁ』
『だって、俺は結婚するなら希帆がいい』

椅子にふんぞり返った風雅はつまらなさそうに投げ出した脚をゆすった。子どもみたいな仕草だ。
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