仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
「明日から一ヶ月、また離れ離れだね」
「そうね」
「気のない返事だなあ」

そんなことはない。私なりに気にはしている。私への愛情執着だだ漏れのこの男が、私のいない間にいいこにしているか心配ではある。
料理を作っている間、風雅が部下と電話で話す声を少し聞いた。やはりかなり忙しそうだ。それに、風雅は私にわからないように濁していたけれど、どうもトラブルも起こっているらしい。

もちろん、風雅はひとりでなんでもこなしてしまうのだろう。私がいてもいなくても彼の能力は変わらない。でも一応妻として夫のメンタルケアが近くでできないのは歯痒いというか……。まだハグ以上していない身でケアとか言うのはおこがましいかな。

「そうそう、チェスト買い足すわよ。向こうのマンションは引き払うから。ほとんど荷物は売っちゃうけど、衣類とかそれなりにあるし」
「希帆がデザインしたヤツにしようね。あ、この部屋の内装も希帆好みにしてくれていいんだよ」
「自分の住まいはこだわりないからいいのよ。シンプルな方が好き」
「希帆らしいね」

髪を撫でると、くすぐったそうな顔で笑う。すごくリラックスした表情だ。この程度でもメンタルケアになるかしら。

今、風雅とは毎晩一緒に眠っている。ハグはされるけれど、それ以上は絶対にさせない。
メシ友が、添い寝する大型犬に変化した。これは私たちなりの距離の詰め方だと思う。
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