溺愛甘雨~魅惑の御曹司は清純な令嬢を愛し満たす~
「おっと、見惚れていて言い忘れるところだったが、今読み上げた予定で違っているところがあったな」
「え?」

俺が黙って指をさした表を眺めると、芽衣子の顔に不安げな表情が広がる。

「この来客は今日じゃなくて明日のはずだが? 初歩的ミスだな」
「申し訳ございません…!!」

芽衣子は立ち上がり、深々と頭を下げた。

その来客予定は内輪の人間と会うものでさして重要ではない。責めるほどのものではないが…。

「何度も確認したつもりでしたが…本当に…申し訳ございません」

微かに声を震わせて、芽衣子は完全に反省しきっている。

芽衣子は新人。そして俺は年上の上司。
笑い飛ばして治めるべきだが―――今にも泣きそうな彼女の顔も、堪らなく可愛い。

「この責任は、どうとってもらおうかな」

歌うように言いながら、俺は芽衣子に近付いた。
そして俯いている彼女の顔を覗き込んで、低い声で囁いた。

「キス、させてくれたら許してあげる」
「え…」
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