クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
「どうかな、これから食事でも。何度かお会いしてことはありましたが、ゆっくりお話ししたことはなかったでしょう?」
「そう…ですね」
「何度か電話したのですけれど出られないから…だからこうして帰りを待っていたんだ」

確かに、見知らぬ番号からの着信が何件かあった…。
お父様から私の番号を聞いたのだろうか。

そう言えば、私もお父様から北村さんの番号を聞いていたけれど…まだ登録はしていなかった。
彼は電話に出ない私を訝しがって、それでこうしてずっとアパートの前で待っていたのだろうか…。

思わず背筋がぞわりとした。

目尻が下がる人のよさそうな笑顔に気を取られるが、それが消えた時にふと見せる目の鋭さに不安な気持ちにさせられる…。

私は頭を深々と下げた。

「申し訳ありません…。今夜は用事があって…」
「用事?」

穏やかだった声が、微かに固くなった。
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