クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
「褒められたのはいいけれど、当の私は「まだまだ未熟な雅己やその取り巻きがそんな対応できるかしら」と半信半疑でね。ところが私の秘書からの情報で、雅己が新しく若い女性を秘書として連れて来たって知ったからピンと来て、一体どんな女性かお会いしてみたいと思ったの。あの息子のことだからきっと自分の家にも連れ込むに違いないと思ってこうして突撃してみたら」

ふふ、とお母様は嬉しそうに口元に手を当てた。

「こんな素敵な人と『お付き合いしている』って紹介されるとはね」

真っ直ぐに私を見つめて、お母様は微笑んだ。

「あの子が私に恋人をきちんと紹介したのは今日が初めてよ。だから私はそういうことと受け止め、そして認めました。芽衣子さん、これから雅己のことをよろしくお願いいたしますね。これからのあの子には、間違いなくあなたが必要だから」
「お、お母様…!」

毅然として頭を下げてきたお母様に、私は恐縮しきってしまう。

そして、罪悪感にも近い不安を覚えた。

お母様は私の素性を知っているのだろうか。
私と雅己さんが結ばれることで、新規事業に差し障りが出てしまうという事実を知っているのだろうか…。

「でも今私が言ったことはあの子には内緒よ。『ほら見ろ、俺の女性を見る目は確かだったろ』なんて調子のいいことを言ってくるに違いないから。この先、会社は譲っても親子関係の上位は譲る気はないので」

と、お母様は笑って、チャーミングに胸をそらして見せる。
子の成長を嬉しく思いつつも、いつまでも愛しい我が子でいて欲しいと願う親心を見せてくれた気がした。
そんなお母様の信頼感が嬉しくて…
それが私の素性を告白することで失われてしまうのが怖くて…
私は「はい」とぎこちなく微笑んで頷くしかなかった。
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