クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
怖い―――というより、憂鬱だった。

そう。
私は父に怯えるというよりも、父の厳しい表情の奥底に垣間見える『もの』に触れてしまうのが怖かった。

それは、『哀しみ』だった。
未だ治らず膿んでいるような、痛々しい傷。

いつの頃からか、父は私を見るとまるで痛みに耐えるかように苦しげな表情をした。

どうして、そんな表情をするのか。
私は父に喜ばれるよう、一生懸命に父が理想とする女性になろうと努力しているのに。

もっと褒めて。頑張ったなって認めて。
そう望んで父に近付いたある時、私は気付いてしまったのだ。

父の心の奥底には、言いようのない深い傷があるということに。

それから父は、まるで厭うように私から距離を置くようになった。
これ以上近付かれて傷の正体を知られたくない、とでも恐れるように。

でも子供だった私は、父のその反応を『私のことを嫌っている』と解釈してしまった。

そうして、どんどん父と距離ができてしまった。

「大丈夫ですよ」

沸き起こってきた罪悪感に苛まれる私を慰撫するように、お母様が優しく言った。
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