クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
「あの夜、偶然にも君と再会して『これは運命だと』思った。そんな舞い上がった俺を突き落とすように、君は俺の前から消えて俺を失望させた―――」
「そんなつもりは」
「ないよね。解かっている。だから、罪深いんだよ。君は―――」

彼の熱い手が私の頬を包んだ。

「俺はもう君を絶対に離したくない。観念して。どうか俺を受け入れて」

近付いてくる唇の魔力から必死にあらがい、私は顔を背けた。

「だめ…」
「どうして」
「…私、結婚するんです」
「…望んだ結婚ではないね」

最後の切り札のように放った一言を、彼はあっさりと跳ね返した。
思わず言葉を無くす私に、彼は「やっぱり」と独り言ちる。
< 77 / 232 >

この作品をシェア

pagetop