溺愛甘雨~魅惑の御曹司は清純な令嬢を愛し満たす~
3、秘書としての日々の中で



「今夜こそ、応じてもらうからね」

私を壁際まで追い詰め、彼はしっとりと低い声で言った。

この状況は…世間知らずの私でも知っている。
『壁ドン』という状況だ…。

「今日で俺の秘書になって三日。もう仕事には慣れたんじゃないかな。君の歓迎会を兼ねて今夜は一緒に食事に行こう?」

専務秘書になって、三日経った。

秘書業務は多岐にわたる。
スケジュール管理、電話・来客対応、書類管理やその他もろもろのサポート業務…そして食事の手配や、休憩時のお茶菓子の用意といった身の回りのお世話まで。
会社内部のことや取引先や専務の交友関係も把握している必要があるのでとにかく覚えることが膨大で、この三日間は瞬くように過ぎて行った。

もちろん、私以上に忙しいのは専務で、ほとんど出掛けていて私が勤務している専務用のオフィスにはたまにしか帰ってこなかった。
正直、この忙殺された三日間は専務とのことを考える余裕がまったくなかった。

だから、三日目の夕方の今、オフィスに戻ってきた専務に突然迫られてしまって、私は金魚のように口をパクパクさせるしかなかった。
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