溺愛甘雨~魅惑の御曹司は清純な令嬢を愛し満たす~
「見返すんだ。自分は誰の言いなりにもならないと。そのために、この専属秘書への登用は有利にならないか?」
「……」
「君の能力を生かして、独り立ちするんだ。俺はその手伝いをしたい」
「そんなの申し訳ないわ。私の個人的なことなのに…」
「もちろん、見返りは求めるよ」

冷たい単語を口にしながらも、彼の微笑は優しげだった。

「見返りは君を口説くことだ」
「…」
「秘書としてそばに置くことはするけれど、君にレールに敷いたりはしない。無理矢理手に入れるようなこともしない。選ぶのはすべて君だ。俺は君に選ばれるよう、全力で君を口説きにいく。その覚悟だけはしておいてくれ」

そう言って降りてきた唇の魔力から、今度はもう逃げることはかなわなかった。
口付けの甘美に酔うように、私は彼の腕に身を委ねてしまった。





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