仮面
あのアイドル募集チラシはただ注目度を高めるために作られたものだとすぐにわかった。


地元アイドルとして活動させたいのは赤ん坊でもおばあちゃんでもない、若い女の子たちだったのだ。


それじゃどこにでもいるアイドルと同じだ。


地元から羽ばたいて行こうと思っても埋もれてしまうのが関の山。


リナは一瞬そんな風に焦ったけれど、それでも地元アイドルを引き受けることにした。


まずは第一歩だ。


どんなことでも経験していないとしているのでは大違い。


それに最近では地元アイドルが全国的に有名になるパターンは多く存在している。


あわよくば自分もその1人になりたかった。


「リナちゃんおはよう」


考え事をしているうちに学校に到着してしまった。


慣れた道だからボーっとしていても足は勝手に動いてしまう。


「おはよう。今日も暑くなりそうだね」


リナはクラスメートに笑顔で返事をする。


「本当だねぇ。あ、リナちゃんが気になるって言ってたCD持って来たよ」


「本当!? わぁ、嬉しい! このCDすっごく聞きたかったんだ! ありがとう!」


少し大げさに喜んで飛び跳ねる。


学校内でももちろんリナはアイドルのリナだった。


みんなに優しく、そして明るく元気。
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