仮面
☆☆☆

翌日も妹の様子はいつもどおりだった。


母親へ向けている笑顔も見慣れたもので変わりがない。


だからこそリナは恐ろしさを感じていた。


家族の前で普段どおり振舞うことができるくらいに、妹はもう何度も万引きを繰り返してきたに違いない。


重たい気持ちを引きずりながらリナは家を出た。


今日はいつものように姿身で念入りに自分の姿を確認することもなかった。


頭の中は妹のことで一杯で他のことが考えられない。


こんなことではダメだと思うが、ではどうすればいいのだろう?


このまま何も見なかったことにして忘れる?


そんなことをすれば妹はまた万引きをするだろう。


そして捕まったりしたらどうなる?


毎日懸命に働いている母親を傷つけることになってしまう。


いくら考えてもリナには解決策を見出すことできなかった。


ぼーっとしている間にまた学校に到着してしまった。


リナは慌てて手鏡を取り出して自分の顔を確認する。


少なくてもみんなを心配させるような顔はしちゃいけないと自分に言い聞かせて、教室へと向かう。
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