Letter - 大切な人 -

 美利は足を組み替えながら視線を教室へと向ける。

 まだ自己紹介が続く中どちらかといえば女子の人数が多く思われるこの教室内のクラスメイト達を見回した。


 子供臭さの抜けない女子が居るのも否定できないが、女子が多い分洒落た格好をした女生徒も多く見られる。

 美利はというと女っ気は全くなく、微かに香水の匂いが漂う他の子と比べ髪は梳かしただけのセミロングに、加工もしていない制服。

 唯一スカートだけは膝丈に織り上げている


 ブレザーの前ボタンをきちんと留めているほかの生徒と比べると男子よりも行儀が悪いのではと思われる格好――
 ブレザーのボタンはせずにその両ポケットに両手を突っ込んで、浅く座り込んだ椅子の上ではゆるく足を組んでいる。

 そしてまた美利は足を組み替えた。


「それじゃあ自己紹介も終わったし、学校の大まかな説明もしたから今日はこれで終わり」



 終礼を終えた後は学校特有のざわめきと共に大半の生徒が一斉に教室から出ていった。


 同じ中学から来ている友人との会話を楽しむ人たち。
 たまたま隣に座ったからと会話が弾む人たち。

 半分羨ましそうに彼ら彼女らを無言で見送る美利がいた。
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