追憶ソルシエール



入学してから特別なことがない限り、ずっと同じ時間の電車に乗って通学していた。その特別なことが数週間前に起き、2本早い電車に乗るようになって1週間以上も経過すればすっかり慣れてしまった。


ほんの少し早起きするのも、朝の挨拶を交わす相手がいないのも。


人は慣れると油断する。油断すると



「あ、ネクタイ…」


こんなことになる。



ふと胸元にあるはずのネクタイがないことに気づいた。校門前で気づいた今、早くに家を出ているからと言って時間に余裕はあるも取りに戻る時間まではないし面倒くさいし。



忘れたところでペナルティもないからこのまま___



「今から身だしなみチェックあるからなー」


朝のホームルーム。いつも大した話はなくほとんど聞き流すような。そんな感じなのに。

騒めく教室。えー、面倒くさいー、そんな声が聞こえる中、那乃と目が合った。



朝、おはようと挨拶を交わしてネクタイ忘れちゃったんだ、と軽く言っていただけなのになぜよりによって今日なのか。


まだ引っかかったことなかったけれど、以前引っかかった那乃は反省文を書いたらしい。


ぽかーんとしたまま那乃を見つめることしかできない。

どうしよう。どうしようもこうもこのままこの運命を受け入れるしかないけれど。


「俺の使いなよ」
< 147 / 154 >

この作品をシェア

pagetop