追憶ソルシエール
片耳イヤホンをはめようとして。
こつこつこつ、と後ろから聞こえる音で手を止めた。さっきから薄らと聞こえていたものの特に気にしてはいなかった。でも、それが少しずつ大きくなっていって、意識しなくても聞こえるようになったら別物だ。
どうしよう。紛らわせようとしていた恐怖心は消えるどころかフツフツと大きさを増す。気のせいかもしれない。だけど気になるとどんどん気になってしまうもの。
もしかして、と頭の中に浮かび上がる文字を消し去るように足を早めた。家までまだ10分以上かかるのに。
なんとか怖いという感情を消したくて今日の夜ご飯のメニューを考えてみたりする。でもそんな気持ちとは裏腹に今のわたしにはそんな方法効かないらしい。
もしなんかされたら?物を奪われたら?もっと酷ければ刺されたりする?
振り向きたいけど振り向けない。振り向いたら最悪、こちらに向かって突進してくるかもしれない。
不安が頭の中を駆け巡って息が荒くなりそうになったとき、ひと際光を放ち出すコンビニが視界に入った。
そうだ、コンビニ。さっきよりも早足で、でも逃げてるってバレないように駆け込んだ。