追憶ソルシエール

「……失礼しまーす」



滅多に入ることのない職員室。どの席に座っているかわからずキョロキョロしていれば、わたしの姿に気づいた担任の先生が、こっちこっちと手招きをする。



「なんでしょうか……?」


先生の元まで早足で向かう。恐る恐る尋ねれば、先生は眉間に皺を寄せ渋い顔を見せた。



「岩田、今日日直だろ? これ次の授業で使う資料なんだけど教室運んどいてほしくてな」

「え?」



那乃が無駄に脅してきたから、先生の用件に拍子抜けしてしまう。心当たりはなかったけど、知らぬ間に先生のお怒りをかっていたらどうしようと無駄に心構えしていたせいか、肩の力が抜けた。


────のも束の間。先生が指さした教卓の横には、大きなダンボールが2つ積み上げられている。




「ちょっと重いけど持てるか? 誰か助っ人呼ぶべきだったなあ」

「いや、大丈夫だと思います」



少し圧を感じる量だけど、やれば出来るはず。気合を入れて一気に持ち上げた。



「悪いなぁ。最近腰が痛くて」

「い、いえ……」



資料が入っていると伝えられたダンボールは2箱。数字だけを見れば少ないけれど、ダンボールを2つ抱えながら無事教室まで辿り着けるかどうかは正直微妙だ。




「よろしく頼んだぞー」
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