追憶ソルシエール
職員室を後にして、いまさら後悔なんてしても無駄だけど思ってしまう。面倒くさくても、2回に分けて運べばよかった。
重さがある分、落とさないようにと慎重になって歩くスピードが行きよりも遅くなった。何回も教室と職員室を往復するのが少し億劫で一度に運ぼうと決意したけど、これじゃあ結局、2回に分けて運ぶときとさほど変わらないような気がする。
「ふう、」
静かな廊下を通り、最難関である階段前までたどり着いた。残すはここの階段を上るだけ。上りきれば、もう終わったも同然だ。
よいしょ、と傾きかけていたダンボールを抱え直して一段一段を慎重に上る。
ただでさえふらつきながら歩いてきたのに、階段ともなると安定感がより失われる。おまけに積み重なった山で視界が塞がれ、前の様子は見えない。
それでも何段か上り、あと一、二段で半分というところ。
瞬間、ふわっと軽くなる感覚。
ダンボールで塞がれていた視界から知った顔が現れる。
「……凌介くん!」
突然現れた人物に、思わず声が跳ねる。
「平気?じゃないよね。なんでこんな大荷物もってるの?」
「わたし今日日直で。先生に頼まれたの」
「そういうこと。ひどいなー先生も」
呆れたように笑う凌介くんの横で、「日直って地味に大変だよね」とご尤もなことを言う凌介くんの友達に共感して頷いた。