毒林檎令嬢と忠実なる従僕〜悪役はお断りなので冷徹な狼従者を甘やかしたら、独占欲強めに執着溺愛されました〜
「……ごめんなさい。アルトが魔力中毒になったのは、きっと私のせいだわ。魔力中毒は、魔力の使いすぎが引き金になるんですって。だから固有魔法のこと……本当に、ごめんなさい」

 彼が魔力の使いすぎを引き起こしたのは、ほかでもない私が固有魔法の可能性を勝手に考察して……本来の『アルトバロン』以上に、彼の幸福を願ったせいだ。

「お嬢様。どうか謝らないでください。それなら、完全に僕のせいです。鍛錬の時間外にも魔力を使い続けていたのは、自分の意思ですから」
「でも……!」
「お嬢様のせいではありません。絶対に」

 強く言い切られて、口をつぐむ。

 従者として私に罪悪感を背負わせないためにそう言ってくれているのだろう。彼のまっすぐな優しさが、今は少しだけ苦しかった。
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