毒林檎令嬢と忠実なる従僕〜悪役はお断りなので冷徹な狼従者を甘やかしたら、独占欲強めに執着溺愛されました〜
「承知いたしました。ありがとうございます」

 アンデ夫人のすかさず商品を売り込んでいく姿勢に、いつもながら凄い手腕だわ……っ! と内心震えながら、私はカップ越しにちらりとお二人を見た。

 それからもハーブティーのお話や、アンデ商会で取り扱っている商品や今後の流行などのお話をしているうちに、クレアローズ妃殿下の顔色は随分と良くなっていった。

 やっぱり、不安や心配で気落ちしている時には、美味しいお茶を飲みながら取り留めのないお喋りが一番の薬になるのかもしれない。

 だがきっと、メローナ様は本気でお喋りを楽しんでいるわけではないのだろう。

 時折、そっとクレアローズ妃殿下の手を握って脈診をしたり、痙攣がないかなどを細かく診察している視線を感じる。
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