粗大ごみを拾ってしまった(恋する冥府の王・死神シリーズ2)
<ミイヤの部屋・ベランダ・18時>

瞑王は子どものように目を閉じて・・・
無心にその時を待っているように見えた。
その身をミイヤにゆだねている・・・キスをしてもらうのを待っている。

ミイヤの思考は切れ切れになるが・・
どうしたらいいのかな・・・なぜ・・そうなるのか・・そうするのか・・

その時
耳元で、それはまるで甘く、溶けるように響いた。
「ああ・・そうか・・傷ついているのか・・・」

ミイヤの心が、一瞬にして凍りついた・・・

遠い記憶が逆再生される・・めまいを起こしそうなくらい最速で・・
・・あの時の弟の事・・・弟の分まで生きねばならない・・
そう、決意したあの日。

そして、弟の未来を奪った事を・・償わなければならない・・・
ミイヤの心に苦しみと悲しみと痛みが、波のように幾重にも打ち寄せる。

波の間に映像が次々と再現されていく・・
スクリーンショットのように。
救急車のサイレン、病院の霊安室、
泣き崩れる母と、それを支える父は歯をくいしばっている。

お葬式、小学校の同級生が泣いている。
先生も泣いている。
黒いリボンのかかった弟の笑顔の写真。
小さな棺の中の弟は花に埋もれて、いつものように安心して
眠っているように見えた。

誰も私の事をせめなかった。
何も言わなかった。
母親は泣き顔で・・・私を見つめていた・・・
その後の記憶がほとんど・・・欠落して・・ない

その封印が解かれたように・・ミイヤの感情が押さえきれない・・
あふれてしまう。

「あ・・ふうっ・・う・・」
ミイヤの喉から嗚咽の声が漏れ、瞑王の腕をつかむ指に力が入った。

その苦しみと悲しみと痛み・・
果てしない絶望が・・
瞑王の満たされない心を、埋めるように流れ込む。

ミイヤは目を見開き、夕暮れの闇に染まる濃紺の空をただ見つめていた。
次々に涙があふれるが、瞑王はその涙を唇で受け止めてくれた。
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