あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています


翌朝も気分は最悪だった。
毎朝一番に欲しくなるコーヒーもまったく受けつけない。

(これは、やはり病院かな)

万里江にお休みをもらってどこか近くの病院へと思っていたら、玄関のチャイムが鳴った。

「はい……どちらさま?」

インターフォンに出ると、カメラ越しに万里江の顔が見えた。

「万里江さん⁉」

こんな朝から何事だろうと、慌てて玄関を開けて万里江を部屋に通した。

「どうなさったんですか? こんなに早く」
「和花、昨日の様子をジョアンナから聞いて、朝一番で来たのよ」

万里江はひとり暮らしの和花を心配してくれたのだろう。

「すみません、ご心配おかけして」
「さ、一緒に病院へ行きましょう。我が家のかかりつけのお医者様にお願いしてるから」

昨夜の心細かった気持ちが万里江の言葉でゆっくりと消えていく。

「ありがとうございます」

長い間ひとりで頑張ってきた和花は、胸が一杯になってきた。
弱った身体には、なによりも優しさが染みるのだ。


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