大切なあなたへ

知らなかった…。


彼がそんな風に思ってくれているなんて…。


彼は志穂の涙を拭いていた。


「妻とは、先週離婚が成立したんだ。
悪かった、辛い思いばかりさせて。
寂しい思いばかりさせて…。
志穂に出会ったこの半年、俺が頑張ってこれたのは、志穂のおかげだ。
志穂の笑顔が、俺にいつも力と勇気をくれていた。
志穂…、愛してる…」


彼はそう言って、志穂にキスをした。


夜の街のど真ん中、ドラマの様なラブシーンをたくさんの野次馬が見ていた。


だが、二人の唇は離れることはない。


この日、二人は最後の夜を過ごした。


お互い、今日、初めて、相手の事がどれだけ好きなのかに気づいた。


別れの今日、この日に…。


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