脱出ゲーム ~二人の秘密の能力~
「入り口のほうに置いてあったって言ってたけど…」


ドア方面に駆け寄って、きょろきょろと探す。


にしても、最初に来たときも思ったけどこのロビーも本当に豪華だよね…。


どれくらいお金かかってるんだろう…。


想像するだけで震えそうになる。


「もしかして、あれか?」


廉の指の示す先には、高級感のある、金色の台車が二つあった。


私がイメージしたのと、同じだ!


「あ、カード!」


手前の台車の上には、さっきと同じカードが置いてあった。

【にむろ ヒント:答えは漢字だよ】

「にむろ…?」


カードを持ったまま、私は考える。答えは漢字なの…?


「にむろってどういうことだ…?」


廉もそうつぶやいて考える様子を見せた。


ひらがなを漢字にするって、ことだよね?

けど、どうやって…?

そのまま漢字にする訳じゃ無さそうだし…。


『瀬那、分かった?』


『ううん。まだ何の見当もつかないわ』


『…だよねぇ』


そううなずきながら、再び頭をひねる。


にむろを漢字にする前に何かに変換するとかってことかな…。


漢字以外で…。

もしかしてカタカナとか?

ニムロ…。


「なぁ、もしかして、この台車が何かの関係してるっことはないか?」


「えっ、この台車?」


台車自体は別に普通だと思うけど…。


「さっきも、近くにいちごが置いてあった。わざわざここに暗号を置いたってことは、この台車がヒントである可能性もあるんじゃないか?」


確かに、言われてみればそうかも…。


「でも、台車がどんなヒントなの?」

「それは分からないが…」


『だったら、台車が二つあるのもヒントなんじゃない?だってわざわざ二つも置く必要なんてないんじゃない?』


瀬那がいつものトーンで口にする。


それも、そうかも。

台車が二つ…。


ニムロ…。


ん?

頭に浮かんだ二つの言葉に違和感を感じた。


なんか、似てる…?


…て、そっか!


「「分かった!答えは二台だ!」」


完全に、声が重なった。


「…お前、パクったんじゃないよな?」


「そっちこそ、私の心を読んだんじゃないの!?」


『…で、なんで答えが二台なの?』


呆れ声で瀬那が聞いてくる。


『にむろをまず、カタカナにするの。そしたらほら、漢字の二台に似てない?』


『…なるほどね。なんというか、子供だましね』


『…瀬那、答えられなかったくせに』


ぼそりと、頭の中でつぶやく。


『なんか言った?』


ドスの聞いた声で瀬那が聞いてくる。


やばっ!瀬那、怒るとめんどくさいんだよね。


『…なんでもないよ!』


「母に二台。暗号はあと一つだな」


ちょっぴり冷や汗をかいた私の横で、廉がそう言う。


「うん」


「で?最後の暗号の場所はどこなんだ?」


当然のように聞いてくる廉を見て、顔が引きつる。



「えーっと…。最後にイメージしたのは…。文字、というか…」


「文字?」


私はさっき、イメージしたのを思い出す。


間違いない。

私が見たのは…。


「…最後は自分達で見つけろって」


そう、その文字が私の頭に浮かんだのだ。


「…じゃあ、手掛かりは無しってことか?」


「そう…みたい」


見上げた時計は四時四十分を指していた。

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