脱出ゲーム ~二人の秘密の能力~
その後も、客室やレストラン、プール、パーティ会場にミュージカルやクラシックの舞台までもある広すぎる船内を案内してもらった。


一つ一つがどれも新鮮なことばっかりで、私は声を上げてただただ驚くだけだった。




「本当にすごいですね!この船」


客室のある階層としては最上階の11階。長く、広い廊下を歩きながら私は興奮気味に飯田さんに話す。ここまでの案内で私のテンションはすでに最高潮に達していた。


「この船はつくられた時期こそは最近ではないけど、オーナーの意向もあって最新設備が色々と設置されているんだよ。だからセキュリティもばっちり。…っと、ここだね」


ほかの客室よりもひときわ大きく、金のラインやラメががちりばめられた高級感のある扉の前で、飯田さんが立ち止まる。


「ここは、どこなんですか?」


「この船に二つある内のスイートルームの一つだよ。…でも、おかしいなぁ。ずいぶんと人がいないけど何かあったのかな?」


確かに他のフロアには清掃員さんや、飯田さんのようなスタッフがちらほらといたけどここには、誰一人としていない。


ふと、何かを感じて振り返ってみるけどやっぱり誰もいなかった。


「まぁ、気のせいかな…」


そう言いながらピッと飯田さんがドアに黒色のおしゃれなデザインのカードを扉の横に取り付けられた機械にかざす。


すると、ドアからガチャリとカギの開く爽快な音が響いた。


このカードをかざすだけでカギが開くなんてすごいよね。


家もこんなカギだったら良かったのに…。



と、その時。


プルル…プルル…。


携帯電話の着信音が鳴り響いた。


私は携帯電話なんて持っていないから、この音は…。


「あっ、電話だ…。ごめん、七瀬ちゃんちょっと待っててくれる?先に入ってていいからさ」


「あ、はい」


私がそううなずくのを見ると、飯田さんは電話を耳に当てて何かを話しながら廊下を曲がり、見えなくなった。


「…じゃあ、早速!」


私はテンションが上がったまま、銀色に光り輝くドアノブに手を掛けた。


「いざ、スイートルームへ!」

この扉が長い長い物語への始まりだったなんて、まさかそんなこと思いもしなかった。

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