たった一輪の綺麗と呼ばれる花を。
ーSide 奏都ー


思わず自分の気持ちを彼女へ伝えてしまった。


あまりにも切羽詰まった表情で、瞳の奥底から伝わる視線に耐えきれなかった。



きっと彼女は、俺の行動や言動にどこまで信じていいのか分からなくなってしまったんだと思う。


必要以上に、誰かが関わって来てそれに答えて後戻り出来なくなってしまう怖さを彼女は知っているから。


俺との関係の中で一線を引かれたくなかった。


今、ここで気持ちを伝えないとまた心を閉ざしてしまいそうで。


少しずつ築き上げてきた関係がここで閉ざされてしまうことが怖かった。



正直、自分がこんなに余裕のない人間だったとは思わなかった。


心和の前では冷静に物事を考えるよりも、感情的に動いている自分がいる。


今まで、誰かを好きになったことも誰かのことを信じようと思った事も1度もなかった。


誰かのことをこんなにも守りたいと思ったことも、こんなにも愛おしいと思ったことも1度もなかった。



体験したことの無いことばかりで自分でも多くの戸惑いを感じていた。


それでも俺は、今この腕の中にある小さな温もりを無くしたくない。


少しだけでも、俺を信じようと気持ちを話してくれて歩み寄ってくれる姿がたまらなく愛おしい。


っていうか、人生で1番の喜びと言っても過言ではない。


たとえ君が生徒だとしても。


いけない関係だとしても、この気持ちに嘘はつきたくない。


自分の気持ちに正直でいたい。


リスクを犯してでも、彼女の支えになりたい。


職を失う可能性があったとしても……


そこまで考えてしまう自分も重症だな……


「先生…。私ね…」


そんなことを考えていると、心和は頭を上げ俺の瞳を真っ直ぐに見つめ話し始めた。


たったそれだけの事が嬉しくて、あまりにも綺麗な瞳に理性を吹き飛ばされそうになるのを必死に堪えた。



「どうした?」



「私…。誰かのこと好きになったことなんてないから……


その、正直先生の気持ちにどう答えていいか分からない…」



「心和。ゆっくりでいい。


今すぐに答えなくていい。


俺は、心和に対する気持ちはこの先もずっと変わらない。


だから、これから一緒に過ごしていく中で心和がしっかり見極めていけばいいと思うから。」



心和が俺の事を今どう思っているかなんて焦って答えを出す必要なんてない。


出会った頃より少しでも心の距離が近づいたことは事実であって、信じてみようと頑張ってくれている心和をこれからも俺は信じたい。



「…はい。」



素直に返事をした心和。


それから1時間休み、心和の体調が落ち着いてから心和は授業へと向かった。
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