転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
 リボンを首に付けたマニエルを見て、ルーエンは元々たれ目の目尻を更に下げて微笑んだ。チョーカーは、なんとなく猫の首輪のような変わったデザインだったが、流行からちょっと外れていたって構わない。マニエルがルーエンの『可愛い』という言葉を聞き、泣きそうな位に感激したことは言うまでもない。

 第二に、マニエルの愛読している連載小説にやっと続きが出たのだ。長らく男色家だった主人公の騎士が、ある日、夕暮れの下で佇む美しい乙女に出会い、たちまち恋に落ちるのだ。そして、彼は真実の愛に気付くが、そうは問屋が卸さない。
 その恋路を邪魔する悪役令嬢が現れたのだ。この顔だけは文句なしの悪役令嬢のキャラたるや、侍女への暴言、ヒロインへのいじめなど、かなり強烈だ。まさに悪役令嬢を絵に描いたような悪役令嬢っぷり。これはもう、続きが気になって気になってならない。

 最後に、今日は今から愛しの婚約者──ルーエンに会いに行くのだ。ルーエンは思った通り大の猫好きで、猫姿のマニエルを見つけるといつも膝に乗せて『可愛い』と言って優しく撫でてくれる。マニエルにとって、まさに至福の一時だ。

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