転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
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 目の前の王子の指が机にあたり、コツンコツンと音が鳴る。アルフォークはその音を聞きながら、やっと助かったと胸をなで下ろしていた。

「それで、勤務時間におまえは何をしている? リアとお茶とは呑気なものだな」
「面目ございません。救出して頂き感謝しています」
 
 無事にプリリア王女に解放されたところでエクリード第二王子殿下に皮肉を言われ、アルフォークは項垂れた。エクリード殿下はそんなアルフォークを見てはぁとため息をついた。

「どうせリアに我が儘を言われて付き合わされていたのだろう? お前はリアの近衛騎士では無いのだぞ?」
「返す言葉もなく……」
「あの我が儘な妹などさっさと周辺国に嫁に出せばよいものを。父上は何をしているのか。顔だけが取り柄だからな、あいつは。政略結婚には喜ばれるはずだ」

 同意するのはさすがに不敬にあたる。アルフォークは無言で苦笑いをしてエクリード殿下を見返した。

「あのまま行くと、リアはお前が欲しいと父上におねだりするぞ。アルはリアを引き受ける覚悟はあるか?」
「俺では身分が足りない筈ですが?」

 アルフォークは伯爵家次男であり、継げる爵位は無い。だからこそ魔法騎士団に入団し、若くして騎士の道を志した。爵位なしの騎士に王女が嫁ぐなどあり得ないことだ。
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