青い夏の、わすれもの。
「あ、そうだ!澪に見せものがあったんだ!」

「えっ?見せたいもの?」

「えっとねぇ、これなんだけど...」


爽は私にスマホの画面を見せてきた。

そこに映っていたのは...チケットだった。


「海咲水族館の半額チケットなんだ。うちの親父がさぁ、上司から大量にもらってきちゃって余ってんだよね~。澪一緒に行かない?」

「うん、いく!私ペンギン好きなんだよね。小学校の遠足以来行ってないから行きたいなぁ」

「じゃ、決まりだね。いつなら大丈夫そう?」


私ははやる気持ちを抑えてリュックの内ポケットに常に入れてある手帳を出した。

パラパラと捲って7月のページを見る。

しかし、生憎7月は大学受験を受ける生徒のための夏期講習で毎日朝から晩まで予定がぎっしりだった。

ならば8月...と思って見てみるとお盆前の1週間は丸々空いていた。

行くならここしかないと思った。

爽にそれを伝えると、8月3日を提案された。

私は1つ返事でOKした。


「いやぁ、久しぶりの水族館楽しみ~」

「爽と出掛けるのも久々だからなんだか今からワクワクするよ」

「だね!あぁ、待ち遠しい」


でも、8月3日に辿り着くまでの道のりが険しい。

夏期講習に定期演奏会の練習のダブルパンチ。

夏バテしそう...。

などと弱音を吐いている場合ではない。

私は爽と別れ、練習に行く前に職員室へ立ち寄った。

というのも、担任の村山先生と面談をするため。

大学受験のことで私は悩んでいた。

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