青い夏の、わすれもの。
私は未使用の会議室に通された。

教材が棚にパンパンに詰め込まれ、今にも棚ごと倒れて来そうな気がして少し身震いした。

私が恐れおののいているとは露知らず、先生は話し出した。


「えーっと、山本さんは...四大受験を希望してるんだよね?学部は?」

「やりたいことが明確じゃないので、とりあえず、まずまず得意な国語を活かせる文学部にと思ってます」


私がそう言うと先生は顔をしかめた。


「いやねぇ、文学部もいいんだけど、文学部に行って教員免許を取れる授業を履修しないと意味ないと思うんだよね。
それか司書とか学芸員とか。

資格取得を目指して行かないとねぇ、途中で学校行かなくなったりするから。それじゃあ高いお金出して行くのに意味ないよね?
だから、明確なビジョンを持って大学選びをしないと失敗するんだよねぇ」


確かにそうだ。

目的が明確でないと人間誰しもやる気がなくなる。

それで単位を落として留年とか退学になってしまったら、親にも迷惑がかかる。

というより、そもそも明確な意思も目的もない私が大学受験をして良いの?

私は、親に大学を出るのが当たり前の世の中になってきているから、私大でもいいから頑張って入りなさいって言われているから受けるようなものだ。

そんな生半可な気持ちでこの先勉強に身が入るのだろうか。

不安の波が胸に押し寄せ、私は呼吸が苦しくなった。


「ひとまず山本さんは自分のやりたいことを明確にした方が良いと思うよ。ノートに苦手なことと得意なこと、好きなこと嫌いなことなんかをまとめると自分の像が見えてくるから」

「はい。分かりました...」

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