青い夏の、わすれもの。
「澪さぁ、風(ふう)くんのこと好きなんじゃないの?」

「うん...まぁ」


風くんというのは、中学時代からの片想い相手。

簡単に説明すると、サッカー部エースの爽やか王子様。

私が風くんに好意を抱くようになったのは、忘れもしない中1の12月10日の放課後の出来事。

その当時私は美化委員会というのに所属していて、昇降口から駐車場にかけてのインターロッキングの掃除をやらなければならなかった。

その日は朝から吹雪いていて、手袋もマスクもやって登校した。

寒さに厳重警戒態勢で臨めたと思ったのに、私は最大のミスを犯した。

それは...マフラー。

お気に入りのピンクとブラウンのタータンチェックのマフラーを家に忘れてしまったのだ。

手首、足首、首は冷えが大敵だと言われているのになぜマフラーを忘れるのか...。

私は自分のミスに呆れてため息ばかりついていた。

でも、そのため息が心も体も冷やしてしまった。

こんなに寒いのに、なぜ私だけこんな惨めな思いをして掃き掃除をしなければならないのか。

なぜ佐久間くんと林くんは手伝ってくれないのか。

なぜ美佳ちゃんは先に帰ってしまったのか。

忘れていたでは済まされない。

4人中1人って...

もう、嫌になる...。

唇を強く噛んでこの痛みや哀しみ、惨めさなどありとあらゆる感情に耐えようと思ったけど、我慢なんて出来なかった。


「あぁ、もぉ!」


周りに誰もいないと思い込み、叫び声を上げたその時だった。


< 58 / 370 >

この作品をシェア

pagetop