秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
「用がないなら帰ってくれませんか?」
「そんな怖い顔すんなよ。可愛い顔が台無し」

そう言って甘いフェイスを向け、私の輪郭をなぞるように指を這わせる。
ひゃ、と声を出しのけぞる。
マサトさんはそんな私の反応にクスクスと笑い、言う。

「拓海が惚れてる女ねぇ。ま、わからなくはないけど」
「…早く、帰ってください」
「まぁ、仲良くしようぜ。俺もこの階に住んでるんだし」
「へ?」

マサトさんはにやり、怪しい笑みを浮かべる。
そうだ、拓海はマサトさんもこのマンションへ越してくると言っていた。でも、それがいつなのか、それはわかっていなかった。

既に引っ越しは済んでいるということだ。

「こ、この階?」
「そ。拓海の右隣はお前だろ?俺は左隣」
「え?!そんな…どうして…他に空いていないかったんですか?」

動揺すればするほど、彼は楽しそうに笑っている。
これは演技なのだろうか。俳優を長くやっているマサトさんとは知り合って日が浅い。

彼がどういう人物で、何を考えているのか全くつかめない。
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