秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
そろそろ私の誕生日だ。
私は7月で拓海は8月。
付き合って初めて迎える誕生日を拓海はとても楽しみにしているようで
せっかくだから以前いけなかったディズニーシーに行こうかと提案された。

それもいいなと思ったけど、私の誕生日は7月31日で梅雨明けかなり暑くなることを想定してちょっと躊躇っていた。

というのも、彼は今月、雑誌の撮影が多くあり、日焼けは絶対にダメらしくてそうなると長時間屋外にいるのはどうなのだろうと思っていた。
拓海は日焼け止めを塗れば大丈夫だというけど、彼の仕事を考えると素直に頷けない。


と。

考えているうちに塾前にタクシーが止まった。

私はお金を払って車を降りるとそのままヒールを鳴らしてビルへ入る。
従業員用のドアから入ると、自習室に生徒がいるのが見えて

「おはよう。早いね」

と声をかけた。

今日は土曜日で、午前中から授業があるから数人の生徒がすでに勉強していた。

「おはようございます」

そう返してきたのは杉山君という高校三年生だ。
私立の中高一貫に通っている優秀な子で、志望校の判定もA判定だからこのままいけば受かる余裕のある生徒の一人。

「あ、先生」

そのまま自習室を通り過ぎ誰もいない廊下を歩くと後ろから誰かが走ってくる気配がして振り返る。

「杉山君?」
「先生、これ、どうぞ」
「…え、」

急に渡された手のひらサイズの箱には綺麗にピンク色のラッピングが施されてあり驚いた顔のまま彼を見上げる。
高校生とはいえ、身長は私よりも高くて他の生徒よりも精神面でも落ち着いているからかかなり大人っぽく見える。

「えっと…何、これ?」
「先生今月誕生日だっていうから。チョコレートです。大したものじゃないですけど」
「…え!もらえないよ。それにどうして?誕生日だからって…」





< 156 / 215 >

この作品をシェア

pagetop