秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
「迷惑でした?」
「いや、そういうことじゃなくて」

生徒の彼より私の方が年上で社会人なのにあたふたしてみっともない。
テンパって視線をウロウロさせてしまうのも先生としての威厳がない。

「とりあえずもらってください。沙月先生のこと、好きなんです」
「え?!」

そう言って強引に私に手渡すと子供とは思えない余裕の笑みを向ける彼に完全に私の思考が停止する。

…今の子はこんなにませているのだろうか。

「受験に受かったらデートしてもらえませんか」
「そ、そんなのできるわけないでしょ!未成年なんだよ、杉山君は」
「じゃあ成人したらいいんですか」
「…そういうことではなくて、」

困っていると杉山君の後方から同期の月野君が歩いてくるのが見えて助かった、と思って彼の名前を呼ぶ。

すると、杉山君はクスクス笑って

「せーんせい。余裕ないですね?」

そう言ってようやく私から離れて自習室へ戻っていく。
彼はT大合格率の高い私立一貫の学校へ通っているのに学内でもトップの成績で生徒会にも所属しているようで内申点も高い。


「どうしたんだよ、急に」
「はぁ。助かったよ。ありがとう」
「なんだなんだ、何があったんだよ」
「いや、別に何もないけど」

以前生徒に告白でもされたか?と言われたことを思い出して苦い顔をする。
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