秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
「どーした?一日中ボーっとして」
「あ、いや。ちょっと考え事を」
「へぇ、お前も考え事するんだ」

土曜日の午前中、私は高校生の一斉の授業を終えて小テストの採点をしていた。同僚の月野公平君に肩を叩かれ我に返る。
採点の手が止まっていることに気が付いた。

月野君は同い年で同じ年に入社した。
研修も一緒に受けたからそれなりに仲がいい。彼は基本理系科目担当だ。

お前も考え事するんだ、というその失礼な発言にイラっとしつつも自分でもあまり深く悩んだりしないからその通りなのは認める。

月野君はこげ茶色の髪を掻き分けるような仕草をして、

「なに、もしかして生徒に告白されたかー?ちゃんと断れよ」
「はぁ、そんなわけないでしょ。されても断るよ」
「お前はそういうところ鈍いからなぁ」

呆れるように大きく息を吐いてスタスタと歩いて廊下に出た。



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