秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
「今、仕事終わったとこ?」
私のスーツ姿を見て彼はそう聞いてきた。私はうんと頷く。
すると恭介は昔と変わらない爽やかな笑顔を私に向けて
「俺もちょうど休日出勤で午前中だけ出てたんだ。どう?これからご飯でも」
と誘ってきた。
私はうーん、と悩む素振りを見せ、いいよと答えた。というのも、本来ならすぐに断ってしまうお誘いだが…今日は拓海から逃れるために用事を作ろうと思っていたからちょうどいい。
「じゃあ、どうしようかな。お台場あたりでも行かない?」
「そうだね。お台場かぁ」
お台場なんて行く機会はほぼない。前に言った時は、確か拓海と一緒だったような…。
意識した途端今までのすべての言動に違和感を覚える。
付き合ってもいない男女が頻繁に会ってひとつ屋根の下一緒に寝る。
…うん、絶対変だよね。
お台場まで電車を乗り継いで休日の午後、私は元カレと一緒にいた。
「お台場って日本科学未来館とかあったよね?あんまり覚えてないや」
「俺らも昔行ったよ。ていうか日本科学未来館って俺いったことないや。ほら海浜公園とか行ったじゃん」
「そうだっけ…」
「すぐ記憶から消すもんなぁ、お前」
呆れるようにそう言われて私は口を尖らせてふいっと顔を背ける。