秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
「…っ…ふ、…ぅ」

拓海のキスは本当にうまい。完全に彼が主導権を握り口内を舌で犯し熱い息が漏れる。ふわふわして気持ちいい。
ドラマでもキスシーンはあると思うけど、こんなキスをしてるのだろうか。

少しだけ気になる。

「た、…く、み…っ」
「もう少し」

何分キスしていたのだろう。先ほどの涙も乾いてきているのに、更にさっきとは違う涙が浮かんできた。なんとか下瞼でそれを支えている状況だ。
拓海がすっと唇を離して私の目を覗く。

「どう?」
「どうって…拓海ってキスうまいね…うん」
「そんなことないよ」
「…あと、かっこいい。端正な顔って拓海のこと言うんだね」
「…」

恥ずかしさで彼の目を直視できない。でも、思ったことを言った。
すると、何故か拓海が黙ってしまって何か悪いことを言ったのかと思い、顔を上げる。

「拓海…?」
「あ、ごめん。沙月は男をその気にさせるのが上手いからそういうの他のやつにはダメ」
「…え?何が?」
「いつも俺ばっかりだよ、振り回されてるの」

どういう意味なのかわからないけど、私は曖昧に頷いた。
受け入れる、それは…どこまでなのだろう。拓海の甘すぎるキスはしばらく余韻が残っていた。
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