秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
「やだ…拓海に会えなくなるのは嫌だ…」

気づいたら涙声になっていて、声が掠れていた。

「そんな顔でそんなこと言われると本当に勘違いしちゃうよ」

拓海から視線を逸らさずに言った。

「…わかった、努力する」
「意地悪なこと言ってるのわかってる。ごめん」

私は無言で首を横に振る。お互いが家族のように思っていたら…こうはならなかった。だからこそどちらかに恋愛感情が芽生えたらその時点で関係は終わる。

拓海はずっと私の傍で演じていた。

私の望む彼を、演じていた。努力してみよう。
拓海を好きになるように頑張ってみよう。今まで彼だけに我慢させてしまったのだから。

「でも、努力って…何したらいいの」

気づいたら抑えきれなくなった涙がどっと一気に溢れて頬を濡らす。
拭うこともせずに彼を見据える。

「簡単だよ。俺を受け入れて」
「受け入れる…?」

うん、といった彼が私の涙を左手の指で拭う。映画のワンシーンのようにゆっくりと時間が流れる。

「泣いてる顔も綺麗」

映画で出てくるようなセリフを言って彼は私に顔を近づける。
キスされるのだとわかり思わず顔を背けそうになる。

「受け入れるって、こういうことだよ」

私ははっとして彼がまた顔を近づけてきたが今度は逸らさなかった。
柔らかい唇が私のそれに重なる。


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